列車
足尾銅山の貨物輸送がメインとして敷設された「足尾線」は、私の生まれた頃には群馬県桐生市の国鉄桐生駅から栃木県の足尾まで 、沿線の人々の足として活躍していました。
私は幼い頃から、父や母に連れられて、祖父の生まれ故郷である東村花輪へ行く時は 此の路線の途中にある花輪駅を頻繁に利用しました。
足尾線に乗って、”シュッシュッ!ポッポ!シュッシュッ!ポッポ!”という心地よい汽車の響きを全身感じながら、親戚を訪ねる時の嬉しさは、一人っ子の私にとって格別のものでした。
ですから私は「足尾線」が大好きでした。
鉄の塊のような巨大な蒸気機関車が、モクモクと煙を吐き、汽笛を鳴らして勇ましく走る姿は、沿線の子供達の憧れの的で、駅や線路の近くでは、何時でも何処でも、汽車を見送る可愛らしい子供達の姿に会いました。
そんな子供達の喜びはしゃぐ姿を見ていると、思わず私まで夢中になってしまいました。
桐生駅の機関区内で機関車の車体を点検している光景に出会った時は、思わず目を見張ってしまいました。
いつも私の家に遊びに来ていた運転手さんがいて「こちらへ来て撮ったらいいよ」といわれドキドキしながら車体の側まで行くと、想像以上のものすごい迫力に驚かされました。
それ以上に圧倒されたのは、そこで作業する人たちの真剣な姿でした。
それ以後、私は桐生駅付近や機関区に何度も訪れて、ダイナミックな蒸気機関車と運転手さん達とのかかわりや列車内や駅での様々な人間模様に、沢山の感動を受けながら、撮影させてもらいました。